介護のプロ道場、今日のお題は
「弄便行為とその対応」です。
それでは問題です。
弄便を見つけたときは、厳しく叱る。
正解は◯×どちらでしょう?
正解は×でした。
【今日の解説 弄便行為とその対応】
便をいじって丸めたり、壁や床にこすりつけたりする行為を弄便(ろうべん)といいます。
弄弁行為があったとき、叱っても認知症の方はなぜ怒られているのか分かりません。
さらに、怒られたこと自体はおそらくすぐに忘れてしまいますが、怒られたことによる気分の悪さや嫌な感情、叱られた人への苦手意識は残ることが知られています。この残された感情によって、他の介護場面でコミュニケーション困難につながることがあります。
このような行為の直接的な原因は、オムツの中に便があること、臭気による不快感、便であることの認知障害です。認知症になっても、快・不快の感覚は消える訳ではないのです。
お尻に便がついたままであれば、不快です。それをなんとかしようとして、オムツに手を入れて不快さを解消しようとしています。オムツをすっかり外してしまうこともよく見られます。
手に便がつきますが、それが便だと認識できないため、丸めてどこかに置こうとしたり、手についた便を布団やベッド、壁などになすりつけて、手を綺麗に保とうとします。
嗅覚が低下している場合には、便を食べ物と思ってしまうこともあります。便を弄る感覚は、高齢者にとって「ハレの日」の食材である「あんこ」に似ているとも言われています。しっかりこねて丸めて、大切にとっておいたり、お世話になっている介護職にあげたい、そう思うこともあるようです。
弄便行為が見られた時には、自分ではどうしたらよいかわからず困っていることが多いので、「大変でしたね」というように、その困りごとに共感しましょう。そして、自分の手が汚れていることにも困っているので、「手を綺麗にしませんか?」と浴室に連れて行って、まず目の前にあり嫌な臭いがする物がついている手を洗い、そして臀部をちょうど良い温度のお湯で洗い、気持ちよくなってもらいます。
この時に焦って冷たい水を浴びたりすると、浴室=嫌な思いをする場所、と捉えてしまいますので、困っていることへの共感、そして清潔行為の心地よさを追求することがポイントです。
速やかに処理ができるように、普段から手袋、エプロン、浴室(シャワー)、ご本人の着替えなど、準備しておきます。
そして、弄便行為の対処としては、その方の身体能力にも寄りますが、できるだけオムツでの排便を避けることが目標です。
排泄リズムを良く観察して、排便時刻を推定しつつ、その時間を見極められたら、水分摂取を促したり、可能であればしばらく座位を保つことも排便を促し、タイミングよくトイレまたはポータブルトイレで排便できるようにします。陰部を心地よい温度の湯で洗浄したり、温タオルで綺麗にしたりして、心地よさを体感してもらいます。
弄便の処理をするより、排便のタイミングをつかみ促し、排泄介助をする方が、実は介護量としても合理的です。
弄便行為に初めて遭遇したご家族は、とてもショックを受けます。自分の親や配偶者が、よりによって便をいじっている、それはとても認めたくない事柄です。そして介護職にとってもかなりガックリする現象ですよね。
ご家族にはなぜ、弄便行為が起こるのかを説明し、対応についてもまずは一緒に行うようにしてみましょう。