介護のプロ道場、今日のお題は
「睡眠のメカニズム」です。
それでは問題です。
睡眠には日中の「疲労」も関係している。
正解は◯×どちらでしょう?
正解は、◯ でした!
【今日の解説 睡眠のメカニズム】
睡眠には、目が覚めているときの疲労がたまることによる「睡眠欲求」と、身体の中にある「覚醒力」という二つの力が関係しています。
発育や運動によって子どもや運動量の多い人は、「睡眠欲求」が高くなるため、睡眠時間が長くなります。しかし加齢によって代謝が下がり、運動量も低下するため消費カロリーも少なくなり、「睡眠欲求」は減少してしまいます。
適度な運動が睡眠に役立つ、というのは「睡眠欲求」を高めるためなのです。
「覚醒力」は、体内時計から発信され、睡眠欲求を抑えて人を覚醒状態にします。
体内時計とは、概日リズム(サーカディアンリズム)を作り出す働きで、脳内の視床下部の視交叉上核にあります。最近の研究では、体内時計は身体の各所にあることがわかってきました。
脳の体内時計と身体各所の体内時計が連携して、睡眠と覚醒、体温、行動、ホルモン分泌等のリズムを作り出しています。
起きる前にはアドレナリンというホルモンが副腎皮質から分泌され、覚醒を促します。興奮した状態になると、起床前でなくてもアドレナリンは分泌されるため、覚醒が促されてしまいます。そのため、リラックスした環境を作ることが睡眠には必要なのです。
睡眠と覚醒のリズムに影響しているのが、脳内の松果体から分泌されるメラトニンというホルモンです。メラトニンは睡眠を促す作用がありますが、明るい光の下では分泌が抑えられるという特徴があります。
そのため、起床時間を決めて、太陽の明かりを浴びたり、室内を明るくするおくことで、メラトニンの分泌を抑え、覚醒を維持することができるのです。
起床時、目からから光刺激を受け、メラトニン分泌が抑制された後は、約15時間くらいで、分泌量が増えるという変化が起こります。例えば朝6時に起きると、21時くらいになるとメラトニンの分泌が増え、23時頃になると眠気が起きるくらいの量になります。
しかし、夜でも強い照明を浴びればメラトニンの分泌量は減ってしまいます。睡眠に適した照度は30ルクス未満(かすかに形が見える程度)と言われていますが、室内照明は300〜500ルクスはあるので、睡眠に影響を与えてしまいます。
ちなみに視覚障害のある方は、体内時計のシステムが光刺激によるメラトニン分泌抑制を補っている言われています。
メラトニンはセロトニンという神経物質を材料にして作られます。
セロトニンは、光刺激を受けることによって増加します。つまり、朝太陽の光を浴びると、セロトニンが増えて、メラトニンは抑えられる、増えたセロトニンを材料にして夜メラトニンが増える、というしくみになっています。
ちなみにうつ病になると、このセロトニンが少なくなっていると言われています。睡眠を促すメラトニンの材料であるセロトニンが少ないうつ病だと、睡眠障害が起こりやすくなってしまいます。
またセロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンから合成されます。
トリプトファンはたんぱく質を多く含む食物に含まれています。植物性タンパク質(大豆、豆類、穀類)の方が脳内でセロトニンの材料と使われやすいと言われています。高齢者のタンパク質不足が問題になっていますが、睡眠にも影響があるかもしれませんね。バランスの良い食事を心がけることも大切です。
認知症になると、脳全体の萎縮が起こります。すると脳にある体内時計の働きが乱れ、概日リズムが乱れます。つまり覚醒力が低下します。さらに運動力が低下することで、睡眠欲求も低下することで、睡眠障害を起こしてしまうのです。
睡眠欲求と覚醒力のバランスを整えるような、環境整備や支援が大切ですね。